中東・ネットスーパーレポート No.4
ネットスーパー:二つの潮流=小商圏モデルと大商圏モデル
スーパーサンシやフレッシュシステムズしか経験したことのない私が、初めてそれ以外の方や企業と接触したのが、十数年前の事です。山田社長のプロデュースで、チェーンストアさんの皆さんに、サンシの現場を見て 頂き、議論をさせて貰いました。その時の第一印象は、「日本には、似て非なるネットスーパーがある」という事でした。事実、説明していても言葉が通じない事が、多々あったのを覚えています。
具体的な事例では、<稼働会員様>とい概念が通じませんでした。私は、今では常識と思いますが、というか、徐々に多数派になって来たと思っていますが、
<ネットスーパー売上=稼働会員様数×月間ご利用額>
と考え、実践して来ました。だから、<稼働会員様>という概念が通じない時、皆さんは、売上をどのように理解されているのか? 逆に分かりませんでした。これが、「私の原体験」、業界デビューのスタートです。
フレッシュシステムズを退職後、故合って、業界の方々と広くお付き合いをする事となりましたが、この感覚は、今でも引き摺っている、根源的な課題です。結局、売上の理解に二つのアプローチがある事が、今も続いています。
- <売上=稼働会員様数×月間ご利用額>
- <売上=配達単価×月間配達件数>
私は、?を小商圏モデル、?を大商圏モデルと呼んで、区別しています。?の代表モデルは、スーパーサンシ。?の代表モデルは、イトーヨーカドー。
小商圏モデルの特徴は、リーゾナブルな価格で高頻度のご利用を促し、結果、月間ご利用額を極大化する事です。
*サンシ日永カヨー店モデル⇒@3,200×6.8回≒22,000円
一方、大商圏モデルは、配達単価を極大化する為、低頻度のご利用で、月間ご利用額は低いのが特徴です。
*イトーヨーカドー大森店モデル⇒@6,000×2回≒12,000円
結果、サンシモデルは比較的小さな商圏で、IYモデルは大きな商圏になります。共に年商6億円以上の日本を代表するネットスーパですが、全く違うアプローチで、ネットスーパーに臨んでいる事が分かります。
イトーヨーカドーさんのネットスーパーをベンチマークし、ずっと観察して来ました。私の話を継続して聞いて頂いている方は、「IYさんの高単価モデルは、早晩、シェア限界に達して伸び悩む」という、私の指摘をご存じと思います。最近のIYさんの動き(=ダークストア、アスクルと提携してのIYフレッシュ、配達料請求モデルへのトライなど)は、大商圏モデルへのIYさん自身の懐疑の芽生えの結果と、私は理解しています。
一方サンシは、ここ十数年、商圏拡大せずに業績(=売上・稼働会員様数)を、昨対で5?7%伸ばし続けています。これは、小商圏モデルが、シェア限界に到達していない証です。
この十数年、ネットスーパー業界をリードして来た、二つのモデルの代表企業の明暗が分かれて来ました。伸び続けるサンシ=小商圏モデルと、成長限界に達して利益面でも苦戦のイトーヨーカドー=大商圏モデルです。これは、二つのモデル共存から、一つのモデルへの収斂の始まりでしょうか?
以上